うみに溺れる。
幼なじみ
小さな頃から俺達はずっと一緒に居た。
冷静沈着な雫玖と天真爛漫な海、そして好奇心旺盛だった俺。
中学生特有の思春期のあの時期は海となんとなく距離感はあったが、会話がなくても気付いたら近くに居た。
高校は流石に離れるかと思っていたけど結局同じで、俺はまた変わらない日常が始まるんだと思っていた。
「…は?」
「僕と海ね、付き合う事になったんだ」
幼なじみという関係はこんなにも簡単に崩れるものなんて俺は知らなかった。
というか、雫玖は海をその、…恋愛的に見ていた事さえ知らなかった。
なんで言ってくれなかったんだろう、とか俺の事考えなかったのかよ、とか。
「……おめでとう、」
モヤモヤする気持ちを悟られないように、なんとか笑顔を作って祝った。
雫玖は嬉しそうに「ありがとう」と微笑んだ。
「僕達が恋人同士になったからって今まで通り何も変わらないから」
いくらなんでもそれは無理があるだろう。
俺達は今まで、“幼なじみ”だから3人でも上手くいってたんだ。
どちらかが付き合うという事になれば、今まで通りなんてありえない、変わっていくに決まってる。
雫玖なら、そんな事くらい分かってると思ったのに。