うみに溺れる。
「あれ?空人もう帰んの?後少ししたら雫玖来るよ?」
「へぇ」
「え、どうしたの?」
「俺先に帰るわ、お疲れ〜」
「え、ちょっと!」
幼なじみから恋人同士になった2人と同じ空気を吸うのは居心地が悪かった。
タイミングが合えば一緒だった登下校もそのうち別々になっていった。
どうして自分がこんなにモヤモヤして、イライラしているのかが分からない。
別に、喜ばしい事じゃないか。
その日も2人よりも先に家に帰り、やる事もなく課題を終わらせ外にいるユキチの元に駆け寄った。
階段を駆け下りる足音が聞こえていたのか、既にユキチは尻尾をぶん回して喜ぶその姿は純粋で可愛い。
「散歩行くか、ユキチ!」
わんっ、と大きく吠えた声が庭に響いてリードを繋ぐと、まだかまだかと俺の方を振り返っているのを見て興奮しているのが分かった。
外に出るなり、グンッと思い切り引っ張られた時だった。
「久しぶり、空人」
「……雫玖、」
制服姿の雫玖がいつものように優しく微笑んだ。