うみに溺れる。
「ごめん、遅れた」
「良かった、何かあったのかと思ったよ」
部活終わり、この日なら大丈夫とメールを送るとこの前の公園に呼び出された。
すっかり日は沈み、公園に立っている照明灯が唯一俺たちを照らした。
「そんな構えないでよ」
「いや、だって俺、」
「その気持ちだけで十分だよ」
雫玖は恐ろしいほどに優しい。
「……海ね、海もね、空人の事が好きだよ」
静かな空間にポツリとそう呟いた。
内容と声色が合わないその言葉に「え」という声が息と共に漏れた。
「ははっ、驚くよね」
「驚くっていうか、何言ってんだよ。お前ら付き合ってんだろ?海が俺に対する好きは、」
「恋愛感情だと思うよ」
「は、?」
あの時と違い、公園は虫の声も聞こえず静かだった。
たまに風が吹いて木が揺れる音くらいが聞こえた。
「僕と2人で居る時も海はよく空人の話をするんだよね。『空人これ好きそう』とか『この前空人がね、』とか」
「……」
「海の中に俺はあんまり居なくてさ」