うみに溺れる。
「ムカつくよね」
「え」
「海は僕と付き合ってるのに、その奥底では僕じゃない奴を想っててムカつくよ。ましてやそいつと両思いだなんて」
ありえない。
掴んでいた俺の手をゆっくりと離して、今度は雫玖が俺の腕をグッと掴んだ。
段々と爪がくい込み、痛みが走った。
「空人には悪いけど、結構前から僕は空人の事が嫌いだよ」
「なん、」
「なんでって、そりゃそうでしょ」
「雫玖」
「だからちょっと意地悪しちゃった。幼なじみの片方が付き合いだしたら今まで通りなんて到底無理なのに」
「は、わざとだったのかよ」
「当たり前でしょ、そこまで馬鹿じゃないよ」
苦しめばいいと思ったと雫玖は言った。
作戦成功かな?とも。
この場に似合わない仕草の雫玖に変な汗が出てくる。
…こんなの俺が知ってる雫玖じゃない。
「空人は上手いよ。僕をあの人の息子だって分からせてくるのが」
「はぁ、?」