Rescue Me
 「えっと、この辺にクリアファイルや名刺ホルダーなど必要な物はなんでも揃ってるので、ここから自由に取って使ってください」

 「はい」

 私は早速秘書室の中を簡単に久我さんに説明した。

 久我さんは桐生さんと同じ32歳くらいで、細身ながらも逞しさを感じる体躯の持ち主だ。身長も高く桐生さんと同じかそれ以上の185センチはあると思う。

 眼鏡をかけたその顔はとても端正な容姿で、桐生さんほど甘く人懐こい雰囲気はないものの、とても大人で落ち着いた彼独特の雰囲気がある。恐らく多くの女性を惹きつけているに違いない。

 彼は比較的女性の応募が多い中から選ばれた秘書で、以前中小企業で社長秘書をしていた経験を買われた。それとこれは私の想像だが、恐らく桐生さんと問題がおきないよう男性だった彼が選ばれたのではないかと思う。

 久我さんは今回多忙な五十嵐さんのサポートをする為に雇われた。五十嵐さんは最近過密なスケジュールの八神さんのサポート以外にも経営計画の立案をしたり各部署との調整など、会社の運営に関わる仕事もしている。その為久我さんはまず忙しい五十嵐さんのサポート役として入り、いずれは副社長となった八神さんの秘書として働く事になるのだと思う。


 「……それと郵便物はここに置いてあって、……こっちには来客用の食器や飲み物が入っています。普段社長や副社長に来客があった場合は、私がお客様にお飲み物をお出ししますが、もし私がいない時はここからお願いします」

 私は開けた棚を閉め、先程から背伸びしたり屈んだりして乱れたシャツを下に引っ張って整えながら、久我さんに色々と説明をした。しかし私の説明を聞きながら一緒に歩いていた久我さんは、突然私の胸元に視線を落とすとそこを穴が開くほど見つめた。
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