Rescue Me
 中に入ると社長の桐生颯人がデスクから腰をあげた。緊張で心臓がドキドキして手に汗が出てくる。

 「おはようございます。本日より出社いたします七瀬蒼です。よろしくお願いします」

 私は慌ててお辞儀して、人事部で挨拶した時と同じ言葉を繰り返した。

 「社長の桐生だ。よろしく。八神から聞いていると思うが今日から秘書を頼む。彼がしばらく七瀬さんと一緒に秘書の仕事を担当するから彼らから色々と学んでくれ」

 桐生社長はそう言って人懐こそうに微笑んだ。

 黒髪で切れ長の目の知的な感じのする顔はホームページに乗っている顔写真よりもずっと若く見える。30代半ばかと思っていたがもしかすると29か30歳くらいなのかもしれない。背が高く185センチはあるのではないだろうか?立ち上がると圧倒的な存在感がある。

 しかし何より一番驚いたのは写真で見るよりもかなり男前な事だ。顔のパーツがバランスよく配置されその端正な容姿は大人の男としての鋭さと色気を兼ね備えている。社長でおそらく金持ちで男前。……これまたなんともモテそうな男だ。

 私がそんな事を考えながら社長を見ていると、彼も私を頭のてっぺんから爪先までじっと見ている。その顔にはなんとも言えない表情が浮かんでいる。

 ── この格好社長秘書としてまずかったかな……。だってまさかこんな仕事につくと思わなかったんだもん。後で八神さんに服装のこと聞いてみよう。
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