Rescue Me
 「その社長が、これまた怖くて厳しい人でさ。でも、すごくいい人で、俺に色々と世の中の事や仕事を教えてくれて、すごく勉強になったんだ。それにちゃんと大学まで出ろと後押ししてくれて。それでその会社で一生懸命働きながら大学まで卒業した。結局会社はその後売却されてしまったんだけど、今でもあの人は俺の大切な恩人なんだ」

 私は久我さんがいい人に出会えて、人生を転換できた事を心から喜んだ。

 「久我さん、奥様とお子さんがいらっしゃるんですね」

 「今はもう結婚してないんだ」

 彼はハハっとちょっとバツが悪そうに笑った。

 「彼女とは結婚一年もしないうちに離婚してしまって。その後、彼女は何回か他の男と結婚して子供も何人かいるんだ。ただ彼女との仲は今でも良好で、子供には快く会わせてくれる。だから娘とは週末に会って、一緒に出かけたりしてるんだ。ただ今中学生なんだけど、背が高くて大人びて見える上に化粧して俺に会いに来るから、一緒に歩いてると親子じゃなくてパパ活してる様に見られるんだよ」

 それはそうだろう。何せ久我さんはあんなに若くして父親になったのだ。彼にそんな意外な苦労があるのかと思うとなぜかおかしくて笑ってしまう。

 「笑い事じゃないんだぞ。娘がパパって呼ぶたびに凄く変な目で見られるんだから」

 「あははっ。ご、ごめんなさい。なんだか久我さんイメージと全然違ってて……」

 久我さんがおかしくて、彼が頬を赤くする中、私はクスクスと笑った。
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