Rescue Me

 「じゃ、七瀬さん、部屋はこっちだからしばらくは僕と一緒にこっちのデスクを使って」

 そういって八神さんは社長室を出て先ほどの部屋に戻る。私は社長に一礼すると彼に続いてドアを閉めた。

 「それじゃ、ここが今日から七瀬さんのデスクで、ここに人事からの必要な書類があるから確認しておいて。それから当面は翻訳と書類の作成、あとは電話の対応かな。わからない事があったら僕か五十嵐さんに聞いて。五十嵐さんは今外出してるけどもう少ししたら帰ってくるから」

 何だかわからない事だらけで混乱する。なぜ秘書経験もない私をこの仕事に就けたのか……。でもこの質問をするには何故か躊躇いがある。せっかく与えられた仕事なのに悪い印象は与えたくない。

 「はい。ありがとうございます。……あの、質問なんですが秘書室で働くとは思ってもいなかったのでこんな服装で来てしまいました。もっときちんとした服を着るべきでしょうか?」

 だいたい社長秘書というのは派手ではないが、私が今着ているような貧乏くさい地味な服でもない。何となく心配になって、眉根を寄せながら地味なグレーのスーツを見下ろした。

 「えっ?ああ、服装ね。それでバッチリ。そんなの全然気にしなくていいから!」

 八神さんは嬉しそうに微笑んだ。この地味な服装を上から下まで見てとても満足そうにしている。

 「……そうですか…?」

 何となく八神さんの態度に首を傾げながらも、私は早速秘書として初めての仕事に就いた。
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