Rescue Me
 「それから年末の宮崎へ行く予定もご両親と話しててくれないか。それと行く前に俺からも挨拶したいから電話番号を教えて欲しい」

 「わかりました……」

 実は家族に桐生さんの事はまだ一度も話していない。これは早急に両親に彼のことを話さなければならないだろう。しかし彼がある意味一般人でない大企業の御曹司だということを父と母は何と思うだろうか……?

 「蒼の家族に会うの楽しみだな」

 桐生さんは以前見た写真を思い出しているのかふっと笑った。

 
 突然キッチンにある彼の携帯が鳴り出す。

 嫌な予感がして携帯をチラリと見るものの桐生さんは無視してご飯を食べている。私も極力無視して食べるが2回、3回と鳴り続ける。

 「あの、電話取らなくて大丈夫ですか……?もしかすると緊急の用事かも……」

 さすがに見兼ねた私が言うと、桐生さんはため息をついて立ちあがりキッチンにある携帯を手に取った。すると4回目の着信があり彼は苛立ち気に通話ボタンを押した。

 「もしもし……」

 桐生さんは時々相槌を打ちながら聞いている。電話の向こうからは微かに女性の声が聞こえる。おそらくまた結城さんだろう。

 「……今日は絶対に行かないって言ってあるだろ」

 桐生さんはため息をつきながらイライラと髪をかきあげると、再び相槌を打ちながら聞いている。

 「……親父が?……ああ……わかった……」

 そう言って彼は電話を切ると、片手を髪に突っ込み「くそっ」と呟きながら髪をかき乱した。
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