Rescue Me
 「あの、お仕事ですよね?大丈夫ですよ」

 私は極力平静を装ってそう言った。そんな私を彼は探るようにじっと見つめる。私はなるべく彼に負担がかからないようにとニコリと微笑んだ。

 「丁度これからやろうと思ってた事があるし、私の事は心配しなくて大丈夫ですよ。全然一人でも平気ですから」

 そう微笑む私に彼はなぜか傷ついた顔をする。そしてため息をつくと「わかった」と答えて寝室に戻った。彼は部屋着からもう一度外出用の服に着替えると、鞄と一緒に車の鍵と携帯を取った。

 「それじゃ行ってくる。多分帰ってくるのが遅くなると思うから先寝ててくれ」

 そう言いながら桐生さんは玄関に歩いていく。私も彼の後を追って玄関まで見送った。

 「はい、行ってらっしゃい。あまり無理しないでね」

 努めて笑顔でそう言うが、彼は私とは目を合わさず無言で玄関から出て行ってしまった。

 私は一人ポツンと玄関に取り残されたまま彼が出て行ったドアをいつまでも見つめた。

 そしていつの間にか以前のようにもう大丈夫だと自分に言い聞かせる事ができなくなっている事に気付いた。
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