Rescue Me
 私はイライラしながら暴れるレオをタオルでゴシゴシと強めに拭いていく。

 「まあ二人の問題だから私がどうこう言うわけじゃないけど、それでも我慢は良くないと思うよ。蒼ちゃんがそれでも良いって言うなら別だけど、でも嫌なら嫌だとはっきりと言った方が良いと思うけど……。桐生さんがそんな事で呆れるとは思わないけど、仮にもしそれで呆れられて別れるって言われたら、まあそれまでの男だったって事でしょ?確かに仕事でどうしようもないことなのかもしれないけど、それでも彼には正直に蒼ちゃんの気持ちを話すべきじゃないかな。本当に蒼ちゃんの事を大切に思ってたら、必ず何か考えてくれると思うよ」

 竹中さんがそう私に話していると、いつの間に私たちの会話を聞いていたのか、佳奈さんが私の肩をぽんっとたたいた。

 「そうだよ、蒼ちゃん。何でも最初が肝心なんだからね。我慢して言いたい事も言わないで甘やかせたりしちゃダメよ。もし結婚なんてして夫ができたら、始めっから厳しく躾けなくちゃ。じゃないと勝手な事はするし一人じゃ何もできなくなるの。そのうち私が具合悪くて寝込んでても、お箸持ってきて俺のご飯は?とか言っちゃうんだから。何でも躾は初めが肝心なの。レオ!!」

 佳奈さんは先ほどから暴れて全然私の言う事を聞かないレオに大きな声で命令した。

 「レオ、おすわり!!」

 レオは先程まで暴れていたのが嘘のように、佳奈さんの命令調の声にビシッとお行儀よく座った。

 「伏せ!!待て!!」

 レオは『伏せ』だけでなく何と『待て』までしてしまった。

 「おおー、なんだ。ちゃんと出来るじゃん!」

 竹中さんと美穂さんは感心したように二人揃って声をあげた。私はそんなレオを呆れたように見つめた。

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