Rescue Me
 次の日の午後、新しく里親に登録した家族の家に、犬を飼うのに適しているかどうかの確認の為の自宅訪問をした。その後、少し疲れたのと喉が渇いたのもあって、何か飲み物と食べ物を買おうとコンビニに向かって歩いていた。

 昨日も結局桐生さんは遅くまで帰って来ず、夕飯も外で食べたと言って帰った後倒れたように眠ってしまった。彼が着ていた服からは相変わらず結城さんの香水の匂いが漂ってきて、彼がまたこの週末も彼女と過ごしているのがどうしてもわかってしまう。

 私は昨日の竹中さんと佳奈さんの言葉を色々と思い浮かべた。

 彼女達は言いたいことは言うべきだと言うが本当にそれが正しいことなのだろうか?そもそも私が桐生さんに結城さんと会わないでと言ったところで、何かこの現状を変える事ができるのかさえわからない。

 コンビニに着くとドアを開け中に入った。コンビニの入り口付近で5歳くらいの男の子が一人でウロウロしているのが何となく目に留まる。私はその男の子に目をくばりながら、お茶とちょっとしたお菓子を買ってコンビニを出た。

 しかしコンビニを出てもどうしても気になってしまい子供を一人にしておく事ができない。しばらくお店の前でお茶とお菓子を食べるふりをしながら、子供の親が来るまで一緒に待つ事にする。

 ところが十分経っても二十分経っても誰も来ない。私は思わず男の子に近寄って尋ねた。

 「お母さんを待ってるの?それともお父さんかな?」

 話しかけても男の子は私の存在をまるで見ていないかのように無視しながら、手の中にあるおもちゃか何かを必死にいじっている。

 ── 知らない人とは喋っちゃいけないって言われてるのかな……?

 そう思いながらしばらく男の子の隣にいるがやはり誰も来ない。夕方で徐々に日も落ちあたりも薄暗くなってくる。もう一度視線を同じレベルにすると、男の子に声をかけた。
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