Rescue Me
 「他に何か必要なものはありますか?」

 「大丈夫だよ。ありがとう」

 篤希が笑顔で言うと、蒼は「では」と颯人には目もくれず篤希にだけ笑顔を向けて社長室のドアを閉めた。

 「今回はなんで揉めてるんだ?まあ、何となく想像つくけど……」

 篤希は先ほど蒼が置いていったおにぎりを手に取って包装フィルムを剥がすと一口かじった。

 「それでいつプロポーズするんだ?」

 颯人は無言で答えられない。篤希はおにぎりを頬張りながら颯人を呆れた様に見た。

 「どうせアメリカ行きの事を話すとプロポーズ断られるとか思ってるんだろ」

 颯人は思わず篤希を睨んだ。

 「慎重になるのは当たり前だろ。結婚したらいきなり海外だぞ。しかも一年やそこらじゃないんだ。最低でも5年、最悪は10年以上だ。彼女の家族だってきっと娘とそんなに離れるのは嫌かもしれないだろ。蒼の家族はすごく仲良さそうだし」

 「彼女アメリカに七年住んでたんだぞ。そんな嫌がるか?」

 「蒼は嫌じゃなくても家族が反対するかもしれない」

 「確か彼女の家族はニューヨークに以前仕事で住んでたんだろ?その辺わかってくれるんじゃないか?」

 篤希は颯人にだけ特別に置かれたチョコレートを見た。

 「うじうじと本当に面倒くさい奴だな。そんなグズグズしてると久我みたいな男に取られるぞ。なんせ七瀬さんすごくいい子だもんな。喧嘩しててもわざわざお前の好きなチョコレートなんか健気に置いちゃって……」

 篤希がチョコレートに手を伸ばしたのを見て、颯人は思わずその手を叩いた。篤希はククッと笑いながらすでにイライラしている颯人に追い討ちをかけるように言った。

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