Rescue Me
 五十嵐さんは30代後半の男性で、見た目はなんとなく厳しそうなのに実はとても優しくて家庭的な人だ。最近二人目のお子さんが生まれたらしく小さな子供の写真を机の上に飾っている。

 五十嵐さんはこの会社を社長が立ち上げた時からずっと勤めていて、元々は秘書ではなく違う仕事をしていたらしい。

 しかし雇った秘書が皆あまり長続きしない為、会社と社長のことをよく知っている彼が社長秘書になったらしい。それに彼が女性ではなく、男性だったこともあるようだ。

 「OK, No Problem. I will let him know. Thank you, Bye.」

 私は電話を置くとメモに内容を書き出した。

 「なんて言ってた?」

 「イベントで流す映像で一部変更したい箇所があるみたいなんです。社長にもメモをしたんですが、これ担当の方にも知らせたほうがいいですか?」

 「そうだね。お願いできる?俺さ、今から今度の接待で使う場所の確認と打ち合わせでちょっとだけ外出するんだけど大丈夫?」

 五十嵐さんはPCの電源を落とすと荷物をまとめ立ち上がった。

 「大丈夫です。いってらっしゃい」

 私は五十嵐さんを見送った後、机に座って先ほどの電話の内容をこのイベントの担当者にメールした。

 「はぁー。疲れた」

 私は誰もいない秘書室で独り言をつぶやくと、分厚い眼鏡を取った。

 最近この分厚い伊達眼鏡をかけてコンピューターの画面を長時間見ているからなのか、目が疲れる。しかも軽く頭痛までしてくる。誰も居ないんだったら眼鏡くらいとって仕事しても大丈夫だろう。

 グリグリと目頭をマッサージした後、再びPCの画面を睨んだ。

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