Rescue Me
 私は固まったままの桐生さんに注意しながら、ゆっくりと起き上がると床に落ちているタオルを拾った。

 「ちゃんと拭かないと風邪ひきますよ」

 そう言って彼の頭にタオルをかぶせると濡れた髪をゴシゴシと拭いた。まるで小さな子供の様に大人しく頭を拭かれている桐生さんは、私が彼の顔や肩に付いた水滴を拭いているのをじっと見つめている。


 「……蒼……愛してる」

 私は思わず動きを止めた。今まで好きだと何度も言われた事はあったがこれは初めてだ。

 ゆっくりと桐生さんと視線を合わせた。酔っているからなのかその瞳はいつもより無防備で、彼の様々な感情を映し出している。私達はしばし静寂の中お互いをじっと見つめ合った。

 「蒼、誰よりも愛してる」

 桐生さんは私の目を見てもう一度はっきりと言った。私の目の前が涙で一気に霞んでくる。

 ── 今そんな事言うなんてずるい……

 次々と涙が溢れてきて私は泣き出してしまう。桐生さんはそんな私にキスをするとそっと抱きしめてゆっくりとベッドに押し倒した。

 「愛してる……だから俺を締め出さないでくれ……」

 彼は切なげにそう言うと、抵抗をやめた私に深くキスをしながら着ているものを次々と剥ぎ取っていく。

 温かい彼の体温に包まれて心が落ち着きを取り戻し、今までの不安が和らいでいく。彼に触れてもらえる事が嬉しくて、何度も私を愛してると言いながらキスしてくれる事が愛しくて胸がいっぱいになる。

 桐生さんは泣いている私にキスをしながら、優しく指で愛撫を繰り返した。私の体は彼に久しぶりに触れられていつもより敏感に反応してしまう。じりじりと押し寄せる快感に必死に耐えようとシーツを握りしめるものの嬌声を止める事が出来ない。

 「……ずっとこうして触れたかった……」

 彼は避妊具をつけると、私の中にゆっくりと入ってくる。

 久しぶりに抱かれているからなのか、それとも彼がいつもよりゆっくりと緩い動きで探る様に腰を動かしてくるからなのか、恐ろしいほどの快感が奥深く広がっていく。
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