Rescue Me
 「あの……何か?」

 「いや……そう言えば眼鏡をかけた七瀬さんしか見た事なかったなと思って。目が悪いのかと思ってたけど、眼鏡なしでも見えるの?」

 ── あ、しまった。眼鏡かけ直すの忘れてた。

 「えっと……ちょっと目が疲れてて少しの間だけ外したんです」

 「そうだろうな、あんなに分厚い眼鏡なら。コンタクトレンズにはしないの?」

 「そうですね。ちょっと目にものを入れるのは怖いと言うか…」

 私は曖昧に誤魔化す。

 「そうか……。そういえば忙しくて歓迎会も何もしなかったけど、もし良かったら金曜日にでも八神と五十嵐さんも誘ってどこかに飲みにでも行こうか?」

 社長は以前にも同じように誘ってくれたが、金曜日の夜はいつも週末にある里親の面接やフォスターさんとの犬の引き渡しなどの準備で忙しい。

 「そんな全然気にしないでください。社長もお忙しいですし」

 私が笑顔で応えると、社長はちょっとがっかりしたような変な顔をして私を見た。

 「そう……」

 そう言った後、私の顔をじっと見て何か言いたそうな顔をしている。

 最近桐生社長はよくこういう顔をする。なぜか分からないけど、じっと私の心の中を探るかのように見つめてくる。

 思わずわたしも社長の目をまっすぐ見つめる。何が言いたいのか知りたい。私が至らぬ所があるのだろうか?仕事の事ならもっとはっきりと言ってほしい。

 私は首を少し傾げて社長に尋ねた。

 「あの……何か?」

 「……いや、なんでもない。コーヒーをありがとう」

 そう言うと社長はふいっと私から目を逸らした。

 「……そうですか? では、失礼します。」

 何だかすっきりしないままお辞儀をすると、まだ変な顔で私を見ている社長を残し部屋を出た。
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