Rescue Me
 今日コンサートでバイオリンを演奏をするのは親友の鞍馬(くらま)(かおる)さんで、ニューヨークに住んでいた時の私の母のママ友の息子さんだ。

 彼の家族とはニューヨークに引っ越してすぐに知り合い、その後小さな日本人コミュニティーの中でまるで親戚の様に仲良くなった。

 高校で英語がわからなくて授業についていけなかった時、いつも親切に教えてくれた。アメリカで無事高校を卒業でき、そして大学まで行けたのは彼のお陰とも言える。

 彼は両親が日本人であるものの私と違って生まれも育ちもニューヨーク。日本語も英語も完璧に操る本物のバイリンガルだ。幼少の頃よりバイオリンを習っていて高校で知り合った時には既にかなりの腕前だった。彼はオーケストラで演奏したりあちこちで賞をもらったりと学校の中でも有名だった。

 彼はその後大学で音楽を専攻し、クラシックよりはポップスなバイオリンを弾くようになる。また作曲してSNSにアップしたりと、今では何十万人ものフォロワーがいる。更に色々な企業から仕事の依頼やコンサートに招かれたりして、今ではプロの音楽家として活躍している。

 彼は今回日本で招かれて演奏をすることになり、それと合わせていくつかCMやテレビ番組のエンディングなどに使われる音楽を録音をすることになっている。

 私は桐生さんと一緒に会場に入ると開演までしばらく席で待つ。やがて会場が暗くなり舞台にスポットライトがあたると、長い黒髪を後ろに束ねた薫がピアノや菅弦楽器の演奏に合わせてバイオリンを弾き始めた。
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