Rescue Me
 薫は純日本人だがアメリカで生まれ育ったからなのか、なぜか顔つきが少し日本人離れしていてとても綺麗な顔をしている。そして彼の両親はとても小柄なのに体格も身長も桐生さんと同じくらい大きい。いつもどうしてそんなに大きくなったのかと聞くと、アメリカの乳牛は成長ホルモン剤で育てられているからその牛乳を飲んだ自分も大きくなったのだといつも冗談を言っていた。

 彼のバイオリンの腕前は以前にも聴いたりしてどれほど上手か知っているが、実際に聞くととても迫力がある。久しぶりに彼の生演奏を聞ける事に感動し思わず演奏に魅入った。すると隣にいた桐生さんが少し驚いたように呟いた。

 「薫って男だったのか……?」

 「えっ……?あ、そうなんです……」

 そう言えば薫の事をプロのバイオリン演奏家で、ニューヨークで大の親友だったとは伝えていたが、もしかすると男の人だと言うのを忘れていたかもしれない……。

 「あの、男の人って言っても私彼の事あまり男の人って思った事ないんです。それに薫も私の事本当にただの女友達としてしか見ていないので大丈夫ですよ」

 桐生さんに誤解のないようはっきりと伝えた。とにかく久我さんの事は桐生さんの言うようにこれからは気をつけようと思う。しかし薫は家族のようなものだ。桐生さんが心配するようなことは何もない。

 桐生さんが疑わしいような何とも言えない顔で薫を見ているものの、そんな彼を無視してバイオリンの演奏に耳を傾けた。

 やがて全ての演奏が終わり私と桐生さんは舞台裏にいる薫の部屋まで通してもらう。そこでスタッフや一緒に演奏した人達が忙しく片付けたり楽しそうに話している中、薫を見つけ駆け寄った。
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