Rescue Me
 薫は面白そうに私と桐生さんを見ると、突然私の肩に腕を回した。

 「すみません、蒼をちょっと借りてもいいですか?」

 薫は私の肩を抱きながら部屋の奥へと進んだ。

 「あんなハイスペックな男よく捕まえたな。どうやったんだ?」

 彼はそう言いながら「はい、お土産」と言ってバッグから小さな包みを取り出した。彼の好みのタイプを知っている私は、その包みを受け取りながら薫を嫌な目で見た。

 「うわ、さっきからすごいこっち見てる。なんかあの顔でしかもあの目で睨まれるとなんだかゾクゾクするな」

 薫は桐生さんを振り返りながら嬉しそうにした。それを見た私は思わず頭を抱えた。

 ── どうしてあの人はいつも無駄にモテるの!?

 私がイラついていると、薫はわざと桐生さんに見せつけるように私の腰を抱き寄せ頬にキスをした。腰に巻かれた薫の腕をはぎ取ると、思わず彼を睨んだ。

 「お願い、やめて。今彼とは色々と問題が山積みで微妙な関係なの。これ以上事を悪化させないで」

 「喧嘩してんのか?何やってんだよ。もったいないなぁ、俺が貰って──」

 私は薫の冗談とも本気ともつかない言葉を無視すると、なんとか気を落ち着けようと深呼吸した。

 「……結構深刻なの。ずっと喧嘩してて……。しかも私達の間にはどうしたらいいのかわからない問題が山積みで……。

 どうやって彼に話したらいいのかも分からないし、そもそも話した所で解決するような問題じゃないのかもしれないし……。どうせ話したって余計溝が深まるんじゃないかとか、もう私達はダメになるんじゃないかとか色々と怖くてどうすればいいのかよく分からない……」

 私は俯きながら薫に思わず弱音を吐いた。すると彼はククっと笑って私を見た。
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