Rescue Me
 「蒼は『introvert』だから嫌な事あるとすぐ自分の殻に閉じこもるからなぁ」

 彼はそう言いながら私の頭を撫でた。

 「言いたい事をちゃんと彼に伝えればいいじゃないか。そもそも喧嘩する事がいつも悪い事とは限らない。血のつながった親兄妹でさえ喧嘩するんだ。他人で生まれも育ちも違う恋人となら尚更だろ。でも何か問題にぶち当たる度に二人で話し合って時には喧嘩して……。そうして相手のこともそして自分自身のことも知って……。それでまた問題にぶち当たってお互いの妥協線を見つけて。結局それの繰り返し。二人で生きて行くってそんなもんだろ」

 薫は優しく私を見た。

 「It's not always rainbows and butterflies、Aoi」
 (いつもいいことばかりじゃないんだ)

 「自分の殻に閉じこもってたら何も解決しない。勇気を持って彼に思っている事を話してみろ。きっと受け止めてくれる」

 彼は先ほどから機嫌悪く私達を見ている桐生さんをちらりと見た。

 「蒼は男知らずで少し抜けてるところがあるから心配してたけど、彼なら大丈夫だろ。俺の男を見る目がかなり良い男だって言ってる」

 そう言う薫に思わず笑った。一体彼の男を見る目とは何を基準にしているのだろう。薫は私が笑っているのを見てつられて一緒に笑うと、

 「まあ、それでも別れたら彼の電話番号教えて」

 私は薫に微笑むと「教えません」と丁重に断った。

 「蒼、そろそろ帰ろう」

 そう言いながら痺れを切らせた桐生さんが私を迎えに来た。

 「今日はわざわざお越しいただいてありがとうございました。“ぜひ”ニューヨークにも遊びに来てください」

 薫はニコリと微笑みながら桐生さんに手を差し出した。

 「こちらこそお招き頂きありがとうございました」

 桐生さんは彼の手を取ると別れの握手をした。そして薫は私に視線を移すと

 「Good luck!」

 と囁き私にウインクをした。
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