Rescue Me
 私はずっと彼女に聞きたかった事を尋ねた。

 「結城さんは……颯人さんのこと好きですか?」

 すると彼女は少し驚いた様に意外そうな顔をした。

 「もちろん好きよ。だってあんな素敵な人いないもの」

 「颯人さんのどんなところが好きですか?」

 「そうね……。やっぱり完璧なところかしら。彼、仕事がすごくできるでしょう?私はお兄さんの海斗さんよりもビジネスの才能があると思ってるの。仕事してる時の彼の堂々とした姿、私とても好きよ。それに恋人としてもとても情熱的で優しくて、ベッドでも本当に完璧だもの」

 …… 完璧 ──…。彼女の言葉を聞いて、私の知っている桐生さんを思い浮かべる。

 「あなたから彼に別れを告げてもらいたいの。きっと颯人は優しすぎて仕事もあなたもどちらも捨てきれない。あなただって彼の将来を潰したくないでしょう?彼の為にもどうか別れて欲しいの」

 結城さんはまっすぐに私を見据えた。そんな彼女を私もまっすぐに見返した。

 「もし颯人さんが私と別れた方がいいと思ったら私は身を引きます。もう二度と彼の前に現れないと誓います。ただし、私からは絶対に別れは告げません。彼が私を必要とする限り、絶対に彼の側を離れません」

 以前彼と約束をした。桐生さんが私を必要とする限り絶対に離れないと。これだけは何があっても守りたい。

 結城さんはじっと私を見ると飲みかけの紅茶をテーブルに置いた。

 「そう……残念ね。ボランティアをされるくらいの方だから、もっと思慮深い人で颯人の未来を考えてくれるかしらと思ったんだけど……結局はそんなに大した人じゃないのね」

 そう言うと彼女は席を立ち去って行った。

 私は自分の前に残された紅茶をじっと見つめた。

 例え結城さんの事があっても、例え桐生さんのお父さんが私達の事に反対しても、例えこれから何か色々な問題に直面しても、また二人で話し合って試行錯誤していけば良い。一度乗り越えられたのだから、またきっと二人で乗り越えていける ──…



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