Rescue Me
 その後私と桐生さんはホテルで一緒に朝食を摂ると、まず始めに予約をしていたアルカトラズの刑務所のツアーに向かった。

 アルカトラズは湾の中にポツンと浮かんでいる小さな島でフェリーに乗っていく。ここはかつて凶悪犯が収容された脱出不可能と言われていた刑務所があり、映画の舞台にもなっていてとても有名な観光地になっている。フェリーでその島に着くと桐生さんと一緒に刑務所の中を見てまわった。

 「こんな所に収容されてたんですね。でも本当に何とか脱走しようとした人もいるんですね」

 私は薄暗く古びて狭い牢屋を見ながら呟いた。脱走しようと試みた話などもあり、ふと先ほどフェリーで来た時の距離を思い浮かべる。

 「でも泳げる人だったら対岸まで泳げない距離でもないですよね。颯人さんなら泳げるんじゃないですか?」

 からかってそう言うと、桐生さんは声をあげて笑った。

 「俺を殺す気か。ここ周辺の海水は流れが早いし水温も低いらしい。それにサメが泳いでるって噂もあるからな」


 フェリーから海に落ちないよう桐生さんにしがみつきながら対岸に戻ると、私達は海岸沿いを歩き有名なチョコレート屋さんに行ったりケーブルカーに乗ってあちこち見てまわった。


 その次の日は朝から「California Academy of Science」と言う場所に行き、植物園や水族館などを見てまわる。その後桐生さんはゴールデンゲートブリッジを運転して渡り、時々車を駐めて景色を眺めたりお店に寄ったりしながら、半日かけてサンフランシスコの湾をぐるりと一周する。途中、桐生さんが通った大学にも寄って夕方ホテルまで戻って来た。

 「サンフランシスコのことどう思う?」

 その夜、桐生さんは一緒にベッドに入りながら私に尋ねた。
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