Rescue Me
 ケイラブとリアムは元々小さい頃からの幼馴染で、ケイラブはこのベイエリアの大学へ、そしてリアムはマサチューセッツにある有名な工科大学へ行った。二人は学生時代に何かのアプリを共同で開発し小さな会社を立ち上げ、後にそれを売ってその資金を元に現在の会社を立ち上げた。

 この会社は現在AIを使ったデータ処理技術で、疫病などに対してより適切な薬を開発するデータを提案したり、個人データを元に個々に合った治療薬を提案したりしている。医療関係施設や製薬会社などを主に事業を展開し、アメリカだけでなくヨーロッパそしてアジアにもオフィスを構えている。去年日本にもオフィスを構え、現在従業員約2千人を抱える急成長のスタートアップ会社だ。

 彼らに出迎えられ挨拶を終えると、早速桐生さんは男性達と共に裏庭に出てビールを飲みながら野外に設置されたテレビでスポーツ番組を見たり何か楽しそうに話したりしている。

 そんな楽しそうにしている彼を眺めながら、奥さんのオリビアと一緒に感謝祭のディナーの用意を手伝った。私が以前ニューヨークに住んでいたと言うと、わざわざテレビでメイシーズの感謝祭パレードの中継を見せてくれる。それを見ながら前菜の用意をしているとエバが何か封筒の様な物を持って私の所へやって来た。

 「The tooth fairy came last night.」
 (歯の妖精が昨夜来たの)

 そう言いながら口を開けぽっかり空いた乳歯の抜けあとを見せてくれた。歯の妖精は、抜けた乳歯を夜枕の下に置いておくと、お金に交換してくれる。

 「Nice. How much did you get?」
 (良かったわね。いくら貰ったの?)

 ふわふわの金髪で人懐こいエバは、先程から私に色々と彼女のお気に入りの物を見せに来てとても可愛い。彼女は「$20」と嬉しそうに言って封筒の中身を見せると、また私に何か見せようと次の物を取りに消えた。

 20ドル=約二千円……。なぜ私にも乳歯が抜ける度に妖精が来なかったのだろう……と思っているとオリビアが私のところへやって来た。
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