Rescue Me
 次の日、私達はナパバレーまで車を走らせた。

 ナパバレーに入ると、田舎道の両側に有名な大きなワイナリーから小さいあまり聞いたことのないようなワイナリーまでそれぞれ立ち並んでいる。桐生さんはそのいくつかに車を停めると、二人で中に入って葡萄畑を見てまわったり、そこで作られているワイン独特の製造法を教えてもらうツアーに参加したりする。その後私はワインテイスティングをして、桐生さんは運転するのでワインを何本か買って二人でとても楽しいひと時を過ごす。

 「今日お天気良くてよかったですね」

 私達はフレンチスタイルのワイナリーに立ち寄り昼食をとることにした。外に設置された椅子に座り、目の前に広がる美しい庭や四方に広がる葡萄畑を眺めながら、ここで作られているワインをおつまみや軽食と一緒に楽しむ。

 「そうだな……」

 目を閉じてこの11月にしては暖かくポカポカした日和を楽しんでいた桐生さんは、目を開けると微笑んだ。ここ数ヶ月ずっと見ていた疲れた表情がすっかりとれ、とても幸せそうに見える。

 最後に私達は中世のお城のようなワイナリーに到着し、城の中を見てまわった。ここは中世のお城を再現するためにわざわざ資材を輸入したり、城壁の石を手彫りしたりしていてまるで歴史的建造物を見ているようだ。

 「颯人さん、見て!この壁画すごく綺麗!」

 思わず感嘆のため息を漏らした。

 色鮮やかな色彩で描かれた壁画は、ここで結婚式の披露宴などをする為に使われるとても大きなダイニングホールにある。これと似たような壁画が同じ城内のチャペルにもある。

 すっかり見とれていると、桐生さんが後ろから私を抱き寄せた。振り向くと彼は私に優しくキスをした。そうしてしばらく彼の腕に包まれながら、私は壁画を見つめた。
< 195 / 224 >

この作品をシェア

pagetop