Rescue Me
 「どう思うって……凄いです!」

 私は思わず桐生さんに抱きついた。本当に凄い話だと思う。

 日本人である彼が今急成長のアメリカの会社で経営戦略を立案し、それを指揮していくのは至難の業だ。だが昨日会ったケイラブとリアム、そして彼を面接した人達は桐生さんが出来ると思っている。しかしこれは日本の会社であるお父さんの事業を引き継ぐのとはまた違った難しい挑戦になるのかもしれない。でもある意味とても彼らしい選択だと思う。

 「親父は俺が仕事を断った事に激怒していて恐らく二度とあの会社には戻れない。この仕事だって上手くいかなかったらクビだし、そうなれば俺はまた一からやり直しになる。もう昔の様に蒼に何も差し出せるものがない。それでも俺についてきてくれるか……?」

 桐生さんはまっすぐに私を射抜いた。

 「もちろんです」

 一瞬の迷いもなく答えると、微笑んで彼の手を握り返した。

 「しばらくは日本のオフィスから働く事になるが、それでも頻繁にここに出張で来ることになると思う。そしてビザが取れ次第すぐにここに引っ越す事になると思う。アメリカに引っ越す事を蒼の家族は反対するかもしれない」

 彼は少し不安げに瞳を揺らした。私はそんな彼に勇気付けるように言った。

 「私の家族は絶対に反対しません。それは保証します。でももし反対しても私の一番はいつも颯人さんです。それは父も母もわかってくれます」

 これに関しては自信がある。私の家族は絶対に桐生さんを気に入ってくれる。
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