Rescue Me
 言葉に詰まっている結城さんを一瞥すると、桐生さんは私の手を取った。

 「行こう」

 そう言って腰を抱き寄せた彼を私は見上げた。

 「そう言えば颯人さん、家ってまさかあの家じゃ……」

 私はオリビアが既に買い手がいると言っていたのを思い出した。

 「えっ、あの家気に入らない?蒼好きだって言ってたよな」

 「もちろん好きですけど、だってあの家どれだけするんですか……」

 確かに豪邸というほどでもないが、それでもあの場所であの大きさだ。サンフランシスコは全米でも地価が高い事で有名だ。恐らく数億はくだらない。

 「実は、桐生の持ち株をいくつか売ってケイラブの会社に投資するって言ったらあの家を安く売ってくれる事になったんだ」

 「ええっ!?でも、それでも……」

 私が驚いていると、桐生さんはそんな私を嬉しそうに見下ろした。

 「それより、蒼の家族に年末の休みまで待たないですぐにでも会いに行こう。12月の最初の週末はどうだ?」

 「えっ、そんないきなり……?」

 私はどんどん事を進める桐生さんに呆気に取られる。

 「俺は多分年が明けたら出張で何度もこっちに来るようになるからその前に籍を入れたい」

 「ええっ!?そんな一ヶ月もないじゃないですか……」

 「結婚式はどうする……?宮崎で挙げるか?」

 「えっ、ちょっと待ってください。そんな颯人さんの家族にもまだ会ってないのに……。何もかも急過ぎます……!」

 「大丈夫。母と海斗にはすでに蒼がプロポーズ受けて結婚する事を伝えてある」

 「ええっ……!?いつの間に……!?」

 そうやって私達は手を繋ぎ言い合いをしながら、結城さんを背後に残しロビーを立ち去った。


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