Rescue Me
 そして私はというと、結婚と共に会社を辞め、在宅でも出来る翻訳の仕事を始めた。彼の出張に時々ついて行くためで、今回彼の長期出張に初めてついて行く事になる。

 私達が滞在する場所は以前感謝祭でお邪魔したケイラブの家で、結局桐生さんはあの家を本当に買ってしまった。

 彼は以前興味本位で投資の為に買ったタウンハウスがここサンフランシスコにあって、それが地価の高騰でかなりの値になっていたらしい。それを売却して、それを元にあの家を買ってしまった。



 「お荷物はこれだけですか?何か危険物など入っていないですか?」

 「はい、それだけです。危険物は入ってません」

 スタッフの質問に答えると、丁度隣で同じ様にチェックインしている男性の持っている週刊誌をちらりと見た。その表紙には結城さんと大物政治家の息子との結婚が一面を飾っている。

 このニュースは私と桐生さんが結婚式を挙げた三日後に大々的に報道された。彼女のお相手は代々政治家で中には前総理大臣もいる家系の若手政治家だ。しかも彼はとてもイケメンで、今回結城さんとの結婚は家柄も何もかもお似合いの美男美女の大物カップルとして今とても騒がれている。

 丁度結婚式も終わり今回の出張の為荷造りをしながらテレビを見ていた私は、驚いてこのニュースを食い入るように見つめた。しかし桐生さんはクククっと笑うと「あいつに合ってるんじゃないか?」と言っただけだった。
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