Rescue Me
 「じゃ、気をつけてな。俺も再来週そっち行くから一緒にウィンドサーフィン行こうぜ。実は調べたんだ。そしたら少し南のサンホゼ辺りにできる場所があるんだ」

 「いいな。一緒にギアを見に行こう。実はいい店をこの間見つけたんだ」

 国際線出発口の前でそう言いながら兄と桐生さんはがっちりと別れの握手を交わした。

 兄の翠は何とMelioraの日本支社で働く事になった。彼はとにかく人懐っこい人で会話を弾ませ取引する事がとても上手い。

 前の会社でも営業がトップ成績だった事と、英語も流暢に話せニューヨークでも数年働いた経験があることから、桐生さんがこの会社を勧めこの四月から働く事になった。そして再来週サンフランシスコに研修で来る事になっている。

 「蒼、お前の家に泊まるからゲストルーム用意しておけよ」

 「はぁ!?何で?ホテルに泊まってよ」

 新婚で桐生さんとイチャイチャする予定だったので思わず憤る。

 「俺ホテル嫌いなんだよ。だって誰が寝たかわからない枕で寝れるか?何となくいつも変な臭いするし嫌なんだよ」

 「だったら自分の枕持っていけばいいじゃん」

 「そんな荷物になる物無理。たったの五日だろ。ケチくさい事言うなよ」

 そう言い残して手を上げて立ち去る兄を憤慨したまま睨んでいると、桐生さんが私を抱き寄せ耳に囁いた。

 「大丈夫。ゲストルームから俺たちの寝室までかなり距離があるから、蒼が声出しても聞こえないから。それにいいワインも沢山買ってある。それ飲ませて寝せればいいだろ」

 そう言って兄に微笑んで手を振った桐生さんは「そろそろ行こう」と言って私に向き直った。

 「蒼、俺と一緒に新しい事にチャレンジする気はあるか?」

 桐生さんは微笑んで私に手を伸ばした。

 昔彼が私に色々な事に挑戦してほしいと言った記憶が蘇ってくる。彼がまたどんな世界を見せてくれるのだろうと思うと心が弾む。私は微笑んで彼の手をとった。

 「もちろんです」

 桐生さんは嬉しそうに私を見つめると指を絡めた。そうして私達は手を繋ぎながら出発ゲートへと歩き出した。





 ✼••┈┈┈┈ The End ┈┈┈┈┈••✼



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