Rescue Me
 アレックスと奥さんのビビアンは私達の右隣に住んでいて二人とも不動産を経営している。週末は忙しくてほとんどいないが平日はこうして時々家にいる。

 左隣のご主人ベンと奥さんアメリアは二人とも救急病院で医師として働いている。そしてお向かいさんのご主人ルーカスは小さな会社を経営していて、奥さんソフィアは大学の教授をしている。

 実はこのご近所さん、《《とても》》仲が良い。そして大の世話好きでパーティー好きだ。皆それぞれによくホームパーティーを開き、私と颯人さんもよく招かれる。

 とにかくどこかで人が集まると分かると必ず自分たちも参加したくなる人達で、家族や薫が今私の家に来ていると分かると、全員で会いに来る様な気がする……。

 「あの、長旅で疲れましたよね。どうぞ中に入ってください。今すぐお茶を入れますね」

 これ以上他のご近所さんに見つからない様にと急いで皆を家の中に招き入れた。

 「あら、家の中にもお花がいっぱい飾ってあるのね!」

 「なんかハワイに来たみたい!」

 母と莉華子さんは家の玄関に飾ってある大量の蘭や観葉植物、そして生花を見て喜んだ。

 「なんかジャングルみたいだな」

 父は大きく枝を広げた観葉植物をかき分けながら家中を見回した。

 「何だよ、この変な笛吹いてるやつ」

 翠はリビングルームにある一際大きい置物を見ながら私に尋ねた。

 「えっ?……ああ、それはね、ココペリ(Kokopelli)だよ」

 「えっ、……ココ……ペリ……?」

 翠は「へぇ……」と呟きながら、ネイティブアメリカンが敬っている、猫背で笛を吹く豊作や子宝の神<ココペリ>が家中に飾られているのを訝しげに見つめた。

 薫はお腹にスパイラル模様のある受胎の女神<Spiral Goddess>の像があちこちに飾ってあるのを興味津々で見ている。

 「とりあえず、荷物はその辺に置いて。疲れたでしょう?少し巻き寿司も作ってあるし、日本の和菓子も作ってみたの。よかったら食べてみて。それとも先にシャワーする?」

 そうして皆でゆっくりとお茶を飲みながらお寿司やおつまみを食べて一息ついていると、突然ドアベルが鳴った。

 嫌な予感がしながらも急いで玄関まで行きドアを開けた私は目を見開いた。

 「Hi Aoi! We brought something for your family!」
 (蒼!ご家族に色々持って来たよ!)

 何とそこにはアレックスだけでなく、奥さんのビビアンやご近所さんが皆それぞれ手にワインやクッキーなど食べ物を沢山持って立っていた。
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