Rescue Me
 ── わぁ、なんか本当に全員来た!

 「Thank you. You guys are so kind……」
 (ありがとう。とても親切なのね)

 食べ物や飲み物を受け取り礼を言うとニコリと微笑んだ。ご近所さんも微笑み返し、しばし沈黙が流れる。

 気まずい沈黙が更に続き、そこを一歩も動かない彼らを見て私は重い口を開いた。

 「Would you like to meet my family……?」
 (私の家族に会ってみる……?)

 「YES!!」

 ぞろぞろとご近所さんが中に入ってくるのを見ながら、テーブルの上にある食べ物や飲み物を見た。彼らはとにかく話が好きで、しばらく食べたり飲んだりしながら話をして帰って行く。

 私はちらりと時計を見た。そろそろ颯人さんが帰ってくるはずだ。彼が帰って来る前にもう一度食料を買い足しに行こうと思い翠に声をかけた。

 「お兄ちゃん、私、もう少し食べ物と飲み物買ってくる。悪いけど家見ててくれる?」

 「俺が行ってこようか?」

 「ううん、大丈夫。私じゃないと分からないものもあるし…。すぐ戻ってくる」

 そう言って車の鍵とバッグを手にして出ようとした途端、慌てて翠に一言声をかけた。

 「あのさ、アレックスとビビアン勝手にワインセラー開けてワイン飲む時あるから注意して見張ってて」

 そう言い残すと、近くの食料品店まで急いで買い物に行った。

 三十分後、大きな買い物袋を二つ抱えて家の中に入ると、先程よりもさらに大勢の声が聞こえる。不思議に思い買い物袋を抱えたままリビングルームを覗いた私は思わず絶句した。

 ── たった三十分の間に大変な事になってる……!?

 外のバルコニーからは薫がバイオリンを弾く音が聞こえ、家の中は大勢の人の拍手と「ブラボー」と言う声がこだまし、中には踊ってる人もいる。

 「お兄ちゃん!! 何で人が増えてるの!?」

 私はキッチンに買い物袋を置くと慌てて翠に駆け寄った。

 「いやさ、ビビアンが薫のことSNSで見たことあるって言い出してさ。それで一曲弾いてって話になって、そこのバルコニーで弾いてたんだよ。そしたら外で聞いてた近所の人が聴きたいって言ってここに来たんだ」

 翠はチップスをパリパリと食べながら呑気に私に話した。

 「ええっ!? 知らない人まで家に入れてないよね?」

 私は慌てて家の中にいる人達を確認する。父と母はご近所さんと一緒に踊っていて、莉華子さんはワインを飲みながら彼らが踊ったり薫がバイオリンを弾いているのを楽しそうに見ている。
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