Rescue Me
 ── 何かおかしい……


 以前は私に見向きもしなかったくせに、最近私にやたら構ってくる。

 歓迎会や夕食をしたいと食事に何度か誘ってくれたが、最近はこうやって食べ物を持ってくる。親切心からなのか下心があるのかその辺の微妙な線引きがわからない。

 過去に色々と男性からの問題が絶えなかった私は、こういう好意も警戒し過ぎて素直に受け取れない。

 私は社長の後ろにある窓に映った自分の姿を見た。地味な髪型に大きな分厚い眼鏡、スーツも体の線がわからない寸胴に見えるものを着ている。


 ── まあ、私の考えすぎかな?


 私は社長を再び見た。彼は端正な容姿をしていておそらく女性に常日頃モテている。こういう男にとって女性は選り取り見取りだ。わざわざ私のような地味で醜い女の気を引こうとする訳がない。しかも彼には婚約者がいる。

 「いいえ、仕事のことで悩んでいるわけではないんです。実は犬を保護するボランティアをしてるんですが、そこで保護している一匹が調子良くなくて……。それで仕事帰り様子を見に行ったりしてたのでちょっと疲れてしまったんだと思います。ご心配おかけして申し訳ありません」

 「七瀬さん、そんなボランティアしてたの?」

 桐生社長は少し驚いたような顔をした。

 「はい。実は子供の頃から家族ぐるみでこういうボランティアをしていて、アメリカにいた時もずっとしてたんです。それで帰国した後すぐにこのボランティアを見つけてまた働いてるんです」

 「へー、そんなボランティアしてたんだ。それで金曜日に誘っても断ってたんだ」

 「はい。すみません。」

 彼は私を見たまま何か考えている。

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