Rescue Me
 「俺も行ってみてもいい?どんな活動してるのか見てみたい」

 「えっ……?」

 私は驚いて社長を見つめた。一体何でまた……

 「あの、ボランティアといっても活動自体は本当に地味で……。犬は汚い状態で保護される場合が多くて、そんな社長の考えているような楽しいものじゃないかもしれません」

 「別に楽しみたくて行くんじゃないんだ。七瀬さんがどんな事をしているのか見てみたいんだ」


 ── うーん。どうしよう。

 社長が着ているブランドの服や腕時計にざっと視線を走らせた。

 犬の保護をするなんて聞こえはいいが、病気の犬の面倒を見たり歳を取ってておしめをしているような犬の世話や車での移動もある。車も服も犬臭くなるし、はっきり言えば汚い仕事だ。本気なのだろうか?

 「あの、社長。何も直接犬の世話をしなくても募金という方法があります。社長もお忙しいですし、そういう手助けができる方法もあります」

 そう言ってにっこりと微笑んだ。うちの保護団体は常に金欠だ。社長はお金持ちそうだし、うまくいけば高額を募金してくれるかも……?

 「もちろん寄付もするつもりだけど、一度見てみたいんだ」

 「………」


 ── ああもう、わかったわよ。連れていけばいいんでしょう。本当に後悔しても知らないから。


 私は頭の中で保護団体のスケジュールを思い浮かべた。

 確か今週末の日曜日は、ベッドやドッグフードなどを寄付してくれるペットショップに取りに行く予定になっている。これだったら大丈夫かもしれない。

 「今週末の日曜日の午後はどうですか?」

 「大丈夫だ。午後1時からずっと空いてるから」

 社長はものすごく嬉しそうな顔をした。私はそんな彼を少し怪しげに見つめた。

 彼のここ最近の私に対する関心は一体何だろう?親切心なのか下心なのか、もしくはただの気まぐれなのか全く読めない。

 「承知いたしました。ではまた詳細を後ほど連絡します」

 私は眉根を少し寄せながら、デスクに頬杖をついたままニコニコしている彼を残して社長室を出た。
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