Rescue Me
 「いいか、七瀬さんはとてもいい子だ。お前の様な男は彼女には荷が重すぎる。わかるか?そっとしておくんだ。気を持たせる様なことはするな」

 篤希は眼鏡を押し上げてため息をつくと、タクシーの背もたれに寄りかかって目を閉じた。そんな篤希を颯人はひと睨みすると、手に持った和菓子の袋に目を落とした。

 別に蒼をどうこうしようというのではない。ただ彼女が喜ぶ姿が見たいだけだ。

 彼女は慣れない秘書の仕事を必死に覚えようと、夜遅くまで仕事している時がある。また過去の秘書と違い、颯人のプライベートに踏み込んできたり色目を使う事も無い。最初はあまり期待もしなかったが、今では秘書として立派に仕事をこなしつつある。

 しかし気になるのは彼女のあの地味な変装だ。一体何の為にやっているのかわからない。

 彼女と初めて会った日に思ったのだが、あの地味な格好の下には美しい姿が隠れている。それはつい最近、彼女が眼鏡を外している姿を見て確信した。

 颯人はそんな蒼に興味を持ったのだ。あの醜い仮面を外したらどんな美しい女性が現れるのだろうと。彼女は颯人の好奇心をくすぐる。一体どんな女性が隠れているのか。彼女の事をもっと知りたい。

 突然携帯がなり着信を確認もせず電話を取ると西園寺琉花(さいおんじるか)の声が聞こえた。
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