Rescue Me
 「佳奈さん、ポテトはどうしてる?」

 通された部屋に行くと、ポテトは点滴のようなものに繋がれてベッドの上に横たわっていた。ほとんど意識がなくぼーっとしている。

 私が到着するのを待っていたのか、獣医らしき人が注射を持って中に入って来た。私は悲しくて溢れる涙を拭きながらポテトの小さな手を握った。

 「ポテト、ごめんね。辛かったよね。私が来るまで待っててくれてありがとう」

 薬が投与されてまもなく呼吸が荒く乱れていたポテトが眠るように動かなくなった。

 この瞬間がいつも辛い。今までこのようなボランティアをしてきた中で、保護した犬が病気や怪我から回復できずにどうしても安楽死させなければならない時がある。保護するのが間に合わず、このような残念な結果になる事がたまにあるのだ。

 こういう時自分の力のなさを感じる。

 どうしてもっと早く保護できなかったのだろう。どうして家族を見つけてあげれなかったのだろう。どうしてもっと散歩させてあげなかったのだろう……

 後悔が一気に押し寄せる。

 私がポテトの手を握ったまま泣いていると、優しく頭を撫でる手を感じて顔をあげた。涙で霞む目の前にはなんと社長がいた。

 「七瀬さんを降ろした後、気になって車を停めて中に入ったんだ。……間に合ってよかったな。七瀬さんに可愛がって貰えてきっと幸せだったと思うよ」

 社長は私の手の上にそっと手を重ねるとポテトの頭を撫でた。

 私はなぜだか涙が止まらず、社長に頭を撫でられながらひたすら泣いた。
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