Rescue Me
「すごい……」
私がぐるりと店内を見ていると社長がテーブルに案内しながら教えてくれた。
「ここのオーナーは昔テキサスに住んでて今はこのバーを経営してるんだ。お酒と一緒に色んな料理を出してくれるんだがメキシコ料理が特にうまいんだ」
「颯人さん、いらっしゃい」
ここのオーナーらしき人が社長に声をかけた。
「こんばんは。今日は彼女にうまいメキシコ料理を食べさせようと思って連れて来たんだ。いつものタコスと俺はテキーラ、七瀬さんはどうする?何か飲む?」
私はとりあえずテキーラサンライズをお願いして社長と一緒に座りながらお酒を飲む。オレンジの甘酸っぱい味がして飲みやすい。
「どうして七瀬さんはああいう地味な格好をして会社に来てるの?」
社長の質問にどうやって答えようか迷った。これは本当の事を言うべきなのだろうか?しばし黙っていると彼が口を開いた。
「どうせ変な男にでも引っかかったんだろう」
「っ……」
私は図星で何も言えず下を向く。
「確かに気持ちはわかるが、そんな男のために七瀬さんがそんな格好するなんておかしくないか?」
「別に男の人のためにあの格好をしているわけではないんです。自分の為なんです」
「自分の為?」
社長はテキーラを飲みながら私を見つめる。