Rescue Me
「社長は男の人だからわからないんです。女性が感じるプレッシャーみたいなものを。男性にいちいちいやらしい目で見られたりセクハラまがいのことをされれば、誰でも嫌になります」
「その『社長』って呼ぶのはやめないか?今は仕事中じゃないし」
「え……?」
社長が突然そんなことを言うので私は呆気に取られる。
「そう、出来れば名前で呼んでほしい」
「えっと、じゃあ……桐生さん……?」
社長は満足そうに微笑んだ。
「まあ、確かにそんなくだらない男もいるが、世の中そんな男ばかりじゃない」
「それは分かっているんです。でも会社で揉め事を起こしたり、仕事を辞めなければならないような事にはなりたくないんです」
「前の会社で何かあったのか?」
自分で墓穴を掘ってしまった事に気づき、慌てて口籠る。
「なんとなく察しは付くが、せっかくこんなに綺麗なのに、わざわざ隠さなければならないなんて勿体なくないか?」
「いいんです。私、実はあの格好とても気に入ってるんです。仕事にも集中できるし何より男性のことで問題に巻き込まれないし」
私はテキーラサンライズを一口飲む。
「前の会社を辞めた時、犬の保護をする事に専念しようと思ったんです。犬を保護したり世話をする事でとても幸せな気分になるんです。だから恋愛も必要ないかなと思ってるんです」
ふーんと社長は言うとお酒を一口飲んでから私に尋ねた。