Rescue Me

第6章

 夕方そろそろ退社しようかと思っていると、目の前にいる五十嵐さんが溜息をつきながら何か携帯でメッセージを送っているのが見えた。

 「五十嵐さん、今日息子さんのお誕生日じゃなかったですか?」

 子煩悩な彼はよく2人のお子さんの事について話してくれるので、上の男の子が今日5歳の誕生日だということを覚えていた。

 「そうなんだけど、明日の会議で使う資料に追加するところがあって、ミスで入ってないんだ。今からやり直さないと……」

 五十嵐さんは溜息を再び付くと、印刷し終わった資料を悲しそうに眺めた。

 「どこですか?もしよければ私がやりますよ?」

 「えっ?お願いできる?」

 「もちろんですよ。そんなのもっと早く仰ってください。折角のお誕生日なのにお父さんがいなかったらがっかりしますよ」

 五十嵐さんは目をうるうるさせながら私を見た。

 「七瀬さん、この借りは絶対に返すよ。本当にありがとう!」

 「そんな、本当に気にしないでください。それよりも早く(ゆう)くんの為に家に帰ってあげてください」

 何度もお礼を言いながら帰っていく五十嵐さんを見送った後、書類に追加する資料を打ち込み始めた。


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