Rescue Me
 「いろんな事ですか?」

 「そう。自分の殻にずっと閉じこもってばかりだとせっかく目の前にあることも見えない。だってそうだろ?俺も七瀬さんも日本という殻を抜け出して海外で暮らした。そうすることで日本にいた時には見えなかった日本の事を知ることができた。きっとこれからの人生だって同じだ。いつも同じ殻に閉じこもってないでそこから勇気を出して飛び出すことで発見できることがたくさんある。きっといろんな事が見えてくる」

 そう言い放った彼はどこか自信に溢れている。彼はきっとこうして自分の人生を切り開いてきたに違いない。とても彼らしい考え方に思わず笑みを浮かべた。

 「わかりました。新しい事にチャレンジしてみます」

 私が笑顔でそう答えると、彼はじっと私を見つめた。

 瞳の奥が少し揺れていて、何か強い感情がそこにあるのが見える。私も彼の瞳をじっと見つめていると、社長はその感情を押さえ込むように瞼を閉じ震える吐息をはいた。

 「ほら、着いたよ。アパートの中に入るまでここにいるから。それじゃ週末楽しみにしてるよ」

 「ありがとうございます。では、おやすみなさい」

 私はお礼を言って車を出るとアパートの部屋の前まできて振り返った。社長は手を上げて私に早くアパートに入る様に促した。

 ── 本当に心配性なんだから。

 くすりと微笑むと社長に手を振ってアパートの中に入った。

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