Rescue Me
 私はいわゆる英語で言うところの『Introvert』だ。人見知りと言うわけではないが、人に気を使いすぎて疲れてしまうので1人でいる方が気が楽なのだ。

 誘われればパーティーでも飲み会でも行くのだが、周りの人間に自分のエネルギーを使い果たしとにかく疲れてしまう。

 私には年の離れた兄がいるが、彼は私と反対の『extrovert』だ。彼の場合外で人と会って遊んだり話したりすることで、逆にエネルギーをもらう。多分社長も兄と同じタイプで外で遊ぶことでエネルギーを補っているに違いない。

 今まではこの人を寄せ付けない性格を何とも思わなかったが、最近社長の秘書をやっていてこれではいけないと感じる時がある。

 それに週末社長と遊び歩いてみて、こうして人と過ごすことも悪くないと思い始めた。

 「そうですね……。もっと勇気を出して人と接してみたい…です」

 「例えば…?」

 社長は注意深く私を見つめている。私はしばらく考えた後口を開いた。

 「もっと友達を増やしたり、誰かと付き合ってみたり……」

 「誰かと付き合ってみたい?」

 社長は以前一緒にメキシコ料理を食べに行った時と似たような質問をした。

 あの時は誰か男の人と付き合ってみようかなんて考えもしなかった。とにかく男性絡みのありとあらゆる問題から遠ざかり静かに平和に暮らしたかった。

 しかしあれから社長と一緒にこうして出かけたり、また職場でも五十嵐さんや八神さんのようないい人に囲まれて仕事をしているからか、あれだけ傷付いたのにそれが次第に薄れていく。

 「よくわかりません……。でもいつかはしたいなと心の何処かで思っているのかも」

 そんな風に思える自分に少し驚く。社長は射抜くような目で私を見つめた。

 「七瀬さん、前から言おうと思ってたんだが俺達── 」



 「やあ、これは桐生さん!」

 私の後方から誰かが社長を呼ぶ声が聞こえ、2人して顔をあげた。
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