Rescue Me
 次の日の土曜日、颯人は「Paw Hotel and Daycare」の前に立っていた。

 以前、蒼とペットショップに寄付されたグッズを取りに行った時、ここに立ち寄ってオーナーの千歳さんに会っている。

 颯人が今日ここに来たのは訳がある。蒼を何としてでも助けたいと思ったからだ。しかし彼女は颯人を含め男を全く近寄らせない。どの様にもう一度彼女と接したらいいのか分からなくなってしまった。

 しかしその答えがここにある様な気がしたのだ。彼女がいつも心のよりどころにしているこの場所に……。

 「いらっしゃいませ。…… あら、蒼ちゃんとこの社長さん?」

 「こんにちは。実は今日ご相談したい事があって来ました。それとこちらの団体の活動についてもっと知りたいと思いまして」

 「まあ、そうなのね。私達のような小さな団体に興味を持っていただいてありがとうございます。今丁度何人かボランティアの方が来ていらっしゃるので、どうぞ見学していってください」

 千歳さんに案内されペットホテルの中に入るとスタッフの人が何人かいて、このホテルやデイケアを利用している犬が真ん中の大きなガラス張りの部屋の中でスタッフと遊んでいるのが見える。

 さらに奥に進んでいくと、犬が泊まる為の個室部屋が通路の両側にある。全てガラス張りになっていて、泊まっている犬達が何をしているのかよく見える。

 個室には全てソファーや家具、犬用のベッドがあり、中にはテレビが付いている部屋もある。人間が住んでいるリビングスペースと何ら変わりない。

 中を覗いてみると、犬達はリラックスして快適な部屋で過ごしている。

 「全室犬がいつも飼われている状態とあまり変わらない環境に泊まれるようになってるの。犬だって檻みたいな所に入れられてたらストレスが溜まってしまうでしょう?」
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