Rescue Me
 震える彼女を抱きしめながら、颯人は今日保護団体で見た事を思い出した。

 保護された犬は大なり小なり何かトラウマを抱えている。今日見た子犬も酷い仕打ちを受け、触れられる事に恐怖を覚え悲鳴をあげて鳴いていた。

 蒼はまるであの子犬のようなのだ。過去に酷い仕打ちを受け、再び触れられることに恐怖を感じ心をすっかり閉ざしている。

 颯人は初め美しい容姿をわざと隠す彼女に興味を持った。その後彼女が自分好みの美人だと知り何とか手にしてみたいと思う様になった。

 しかし彼女を知れば知るほどその優しい人柄に惹かれる。蒼は真面目で何事にも一生懸命で、少し大人しいが、人への気配りも良く、困っている人や動物がいれば率先して助ける。

 そんな彼女があの日深く傷付いた姿を見て無性に守りたくなった。あんなに綺麗な彼女が醜く生まれたかったと泣いていた姿に今でも心が痛む。彼女を何とか助けたい。そしてもう一度その心を開いて彼女に触れてみたい。

 颯人は蒼を自分の胸に抱き寄せると目を閉じて、彼女が言った言葉を思い出した。

 辛抱強く愛情を与え続ければそのうち心を開くと。

 なぜなら本当は愛されたいからなのだと……。
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