Rescue Me
 その後、再び熱が出てきた私は、彼のベッドで寝ていると暑くて急に目が醒めた。既に夜なのか部屋の中は真っ暗だった。

 何故こんなに暑いのかと起きあがろうとすると、体に社長の腕が巻き付いているのに気づいた。

 ── なっ……? 何で一緒に寝てるの!?

 慌てて起き上がり、巻きついた手を退かせようとしていると彼が目を覚ました。

 「どうした?また具合が悪くなってきたか?」

 寝起きの掠れた低い声で私に話しかけながら、額に手を当てる。しかも彼は暑いのか上半身裸である。彼の逞しく筋肉のついた上半身が露わになり、私は更に慌てた。

 「ち、違うんですけど、何で一緒に寝てるんですか?」

 「えっ……?だってこれ俺のベッドだし」

 「………」

 そう言われると何も言えず、黙ったままどうしようかと考えていると、社長が再び私の体に腕を回しベッドに引きずり込んだ。

 「ほら、また風邪を引くぞ。さっさとベッドの中に入れ」

 ぽふっとベッドに倒れ、再び社長の隣に横たわる。

 「ほら、手が冷たくなってる」

 そう言うと、彼は後ろから私を抱き寄せた。彼の熱い息が私の耳をくすぐり唇が首に感じられるほど近い。

 すっかり目が覚めてベッドの中で硬直していると、やがて社長の静かな寝息が聞こえて来た。

 そっと体の向きを変えて社長と向かい合うと、綺麗な彼の顔をじっと見つめた。

 彼がなぜ私にここまで良くしてくれるのか分からない。ただあれだけ彼を拒絶したのに、諦めずに手を伸ばし必死に私の心に届こうとしている。

 ── あなたは一体何を考えているの……? こんな私の事をどう思ってるの……?

 彼は女性に慣れているから、こんな事するのは何でもないことなのかもしれない。

 でも……
 
 そっと社長にすり寄った。彼の匂いと体温が私を包み込みとても安心する。

 徐々に眠気が戻ってきて、ゆっくりと目を閉じる。安堵の溜息をつくと、私は彼の腕の中で再び心地よい眠りに落ちた。


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