Rescue Me
 次の日の土曜日、社長と西園寺さんのことを考えながらシャワーから出た私は、部屋の惨状に絶句した。

 「きなこ!!」

 やっとシャワーから出てきた私を待ちわびたかの様に、尻尾を大きく振りながら飛びついてきた犬を見た。

 この子はこの週末フォスターさんが急な用事で面倒を見れなくなり、私が代わりに預かる事にした保護犬だ。

 生後七ヶ月の子犬で、ダックスフンドとダルメシアンの雑種だ。茶色と白の混ざった体に黒い斑点があり、とても可愛い見た目をしている。すでに何人もの里親からこの子を引き取りたいと連絡がきていて、選ばれた家族と明日顔合わせをする事になっている。

 西園寺さんと社長のことでもやもやしていた私は、喜んできなこを預かる事にしたのだが、極度の分離不安症があり全く気が休まらない。とにかく私の後をピタリとくっついて片時も離れない。トイレに行く時も寝る時も私にべったりとくっついている。とても可愛いのだが、一瞬でも見えなくなると不安で吠えながら大慌てで私を探しまわる。

 先ほどシャワーを浴びる為少しの間大丈夫だろうとドアの外に追い出したのだが、その間不安で暴れてゴミ箱やソファーに置いておいた洋服などをあちこちに散らかしてしまった。

 「きなこぉー」

 私はため息をつくと、怒りたいのをぐっとこらえ黙々と片付け始めた。こういう時は怒っても意味がない。逆に怒る事で悪化する事もある。

 きなこは黙々と片付ける私にじゃれつきながら、ボールを一生懸命持って来る。

 「もう、しょうがないなぁ」

 ぐちゃぐちゃに散らかった部屋を呆れて見ながら、きなこを抱きしめてその小さな頭にキスを落とした。きなこは大喜びして尻尾を振りながら私の顔を舐めた。

 「ちょっと待っててね。これを片付けたら一緒にお散歩に行くからね」

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