Rescue Me
 「朝比奈さんとは確かに誘われて映画館に行きましたが、本当にそれだけです!ホテルには絶対に行っていません!そもそも結婚していらっしゃるとは知りませんでした。それでも不快な思いにさせたことは謝ります。申し訳ありませんでした」

 私はとりあえず頭を下げた。同じ女として、彼女に辛い思いをさせた罪は知らなかったとはいえある。


 「あなたねえ、これどう見てもあなたでしょう!」

 朝比奈さんの奥さんは真っ赤になって、ホテルで取られた写真を突きつけてくる。確かに髪型や色、背格好は私に似ているが、帽子を深く被っていて私にも誰だかよくわからない。

 するとビルの方から朝比奈さんが慌てて出てくるのが見えた。

 「鈴!お前こんな所で何してるんだ!?」

 私と奥さんを交互に見ながらみるみると青ざめていく。

 「修二!あなたがこの女と不倫してるのはわかってるのよ。いい?必ず慰謝料を請求してやるから!」

 「だからそれ私じゃありません!」

 「な、何だこの写真は!?お前人のことつけ回してたのかよ!」

 朝比奈さんと奥さんは、私を間に挟み取っ組み合いを始めた。私はぶちギレて朝比奈さんを突き飛ばし彼と奥さんの鈴さんを睨みつけた。

 「朝比奈さん、結婚してたくせに私に言い寄ってたんですか?本当に最低です!しかも他に付き合ってるって言うか不倫してる人がいるのに。付き合ったりしなくて本当に良かったです!奥さん、ホテルの写真は私じゃありません。彼が不倫しているのは私じゃなくて別の人ですよ。この際ちゃんと二人で話し合ってください!!」

 私は怒りを露わにし、頬を押さえると呆然と立ちすくむ見物人をかき分けるようにその場を立ち去った。
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