Rescue Me

第13章

 颯人は空港を出ると腕時計を見た。今は午後四時前で急げば会社に戻れる。

 「颯人、一緒に乗っていく?」

 今回の出張で一緒になった結城冴子と、それに数名の桐生グループの役員がタクシーに乗ろうとしていた。

 「いやいい。これからこのまま会社に行くから」

 「本当にあなた仕事ばかりね」

 冴子は少し呆れたように颯人を見ると、タクシーで去って行った。颯人はタクシーを捕まえると、急いで乗り込み運転手に会社の住所を伝えた。

 今回颯人がアメリカに行ったのは、桐生グループのアメリカの拠点であるニューヨークとサンフランシスコのオフィスの視察の為だ。実は父親からそろそろ戻ってきて、兄と一緒に家業を継げと言われたからだ。

 アメリカにあるこの二つのオフィスは、現地のデザイン会社やソフトウェア開発会社などと連携し、日本やアメリカ向けのソフトやゲーム、システム開発など様々な事業を展開している。現在3年から5年の任期で日本から駐在員などを派遣して、アメリカでの現地法人を管理している。

 ただし日本から派遣される重役やマネージャーが現地で採用されているアメリカ人との意思疎通がうまくいかなかったり、また日本の会社のスタイルでマネージメントしようとしているので社員との信頼関係が築けなかったりと、不満が出ていて会社自体があまりうまく機能していない。

 今回父親からこのアメリカの現地法人をうまくまとめろと言われたのだ。実際に行って見て、問題はかなり深刻だとわかった。今はまだ自分の会社のこともあるのですぐにというわけではないが、おそらく近いうちにアメリカへ行かなければならないだろう。しかも一年そこらではない。最低でも5年、長ければ7年くらいだ。
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