Rescue Me
 「俺たち、付き合わないか?」

 ── な、何を言って……この人ふざけてるの!?

 私は呆気にとられて社長を見つめた。後ろでは五十嵐さんがゴホゴホとコーヒーにむせて、慌てて席を立って部屋を出て行くのが見えた。

 「どうして私が社長と付き合うんですか。結城さんはどうされるんですか?」

 「どこから聞いたのか知らないが、彼女とは随分昔に付き合った事があるだけだ。今はなんの関係もない」

 「なんの関係もない人とは一緒に出張に行ったりしません」

 社長はくっくっと笑った。

 「一体、どこからその情報を仕入れたんだ?KS IT Solutionsの奴らか?」

 「そんなことはどうでもいいんです。とにかく私は社長とは付き合う気はありません」

 「どうして?」

 「どうしてって……それは……」

 水樹さんが言っていた社長の噂が頭の隅から離れず、なかなか答えられない。

 「俺も32だ。過去に付き合った女くらい何人かいる。それとも蒼は今まで誰とも付き合ったことがない童貞男じゃないとダメなのか?それじゃ男が処女じゃないと付き合えないと言っているのと同じだぞ」

 「そんなことを言ってるんじゃないんです!!」

 私は苛立って思わず叫んだ。

 「大体私と付き合いたいって言ってますけど、本当に私の事が好きなんですか?」

 「もちろん好きだよ」

 社長はニコリと微笑んだ。

 「蒼は俺好みのタイプの美女だ」

 そう言って彼は私の顔にゆっくりと視線を落とすとその視線を徐々に下げて、胸の辺りで一度止まると、さらに下げて足元まで見た。
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