Rescue Me
 「本当に最低です!!」

 腕組みをしながら彼を睨んだ。

 「どうして?女の人だって一緒だろ。イケメンだの金持ちだの身長が高いほうがいいだの皆そうやって選んでるじゃないか。実際俺に近寄ってくるのはそういう女ばかりだぞ」

 「私はそんな理由で社長を好きなんじゃありません!」

 ── ……ん?ちょっと待って……

 私は失言に気付き慌てて訂正しようとした。

 「あの、さっきのはその何ていうか……」

 「蒼……、君は俺好みの容姿をしてるけど、勿論それだけじゃない。君の心優しい性格や真面目なところ、気配りできるところとか、自分本位じゃないところとか好きなところは沢山ある。もっと蒼の事が知りたいんだ。友達なんて表面だけじゃなくてもっと深く知りたい。俺と付き合ってみないか?」

 社長は近寄ると両手で私の顔を優しく包み込んだ。

 「でも……」

 彼を今でもこんなに好きでちょっとしたことでもすごく傷付くのに、付き合ったりしたら彼に自分の命を握られるようなものだ。きっと彼は私の心を生かすことも殺すこともできる。

 「蒼、俺を見て」

 社長の優しい声に導かれ、私は彼と視線を合わせた。彼のダークブラウンの瞳が優しく揺らめいて、私はその瞳に吸い込まれる。

 「蒼の事も知りたいけど、俺の事も蒼に知ってほしい。俺の噂をなんて聞いてるか知らないが、確かにあまり自慢できないものもある。でもこう見えても誰かと付き合ってる時は一筋なんだ」

 私は思わず笑ってしまった。

 「何だかあまり説得力がないですね」

 社長は自嘲気味に少し目を伏せて笑った。
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