Rescue Me
 ── どうしよう……。

 私はこのビルで働いている社員達が帰宅する中、途方にくれてビルのロビーから外を眺めた。流石にセキュリティーがあるビルの中まで入ってこないが、朝比奈さんが少し離れた所からうろうろと私が出てくるのを待っているのが見える。

 ── もう、どうして今頃こんな事になるの!?

 朝比奈さんとは一年近くも接触がなかった為、彼がすっかり私の事を諦めたか忘れたのだと思い込んでいた。まさか今更このような事態になるとは思いもしなかった。

 朝比奈さんは私が仕事を辞めた後、謝罪したいと何度も私の前に現れるようになった為、一度警察に相談した事がある。

 ただ実害があるわけでも脅されているわけでもない。結局なんの解決策にもならず、佳奈さんに相談してみたところ引越した方がいいと実は今の大家さんは彼女が紹介してくれた。あの時は前の大家さん、佳奈さんに沢山迷惑をかけてしまい今でも頭が上がらない。

 これでまた彼が社長や会社に迷惑をかけるような事になるのではないかと思うと、頭が痛いのと同時に途方に暮れてしまう。一体これからどうすればいいのか……。この調子だと朝比奈さんが私のアパートを突き止めるのは時間の問題だろう。

 私はビルの外を未だうろついている朝比奈さんを見てため息をついた。これではいつまでたっても帰れない。仕方がないと思った私は非常階段へ続く扉を開けた。



 地下には駐車場があって、出口がビルの西側の方にあり、南を向いている正面玄関からは死角になっている。上手く行けばそこから出れるのではと思い、私は階段を降り駐車場に出る重いドアを少し開けた。

 金曜日の夜という事もあり、地下駐車場は車も少なくがらんとしていてしかも薄暗く薄気味悪い。朝比奈さんの事ですっかり臆病になっている私は、ドアの隙間から恐る恐る駐車場を眺めた。すると突然背後に人の気配がした。
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