Rescue Me
 「あの、お腹すいてますよね……?作り置きなんですけどご飯があるので今温めますね」

 そう言うと私はキッチンに入って冷凍庫の中を見た。いつも週末にまとめて料理をして小分けにして冷凍してある。私がそのいくつかを取り出して電子レンジに入れていると、社長がリビングの棚に飾ってある写真を興味津々で見ているのが見えた。

 「これ蒼の家族?」

 彼はクリスマスにニューヨークのロックフェラーセンターの前でとった家族写真を指差した。

 「はい。もう5年くらい前のものですけど」

 「へー、お兄さんがいるのか……。蒼のお父さんは日本人なのか?」

 社長は私よりもっと日本人離れした顔の父をまじまじと見た。父はハーフなので私よりもっと外国人に見える。

 「父と母は日本人ですけど、父方の祖父がアメリカ人なんです。写真見ますか?」

 私は社長の隣に行くと、棚の中にしまってあった小さなアルバムを取り出した。そこには祖母から貰った家族の大切な古い写真が入っている。

 「これが祖父と祖母の写真です。祖父は昔から日本が大好きで、よく日本中を旅してたらしいんですけど、その時偶然祖母と知り合ったんです。なんでも祖父は祖母に一目惚れしたそうで……。でも結婚する時、祖母の家族の大反対にあったんです。それでもめげずに一生懸命家族を説得して、二人で努力して支え合って……。祖父は今ではすっかり家族の人気者なんです」

 そう言って二人が着物で結婚式をした時の写真を見せた。古い色あせた写真だが、ハンサムな祖父が凛々しくカッコよくポーズを決めて写真に写っている。

 祖母も当時はとても長い黒髪をした日本美人でこうして見るととてもお似合いの夫婦だ。社長はそれを何か懐かしい物でも見つけたように微笑みながら見ると、私をちらりと見た。

 「蒼はおじいちゃん似なんだな。目のあたりがよく似てる」

 そう言って社長は次々とアルバムをめくり、古い家族写真を楽しそうに見ている。そこに写っているのは、家族でキャンプや旅行に行った時や、誕生日パーティーなど家族での楽しい思い出ばかりだ。
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