満月の誘惑
旦那様の声が、私の頭の中で何度も同じ言葉を繰り返す。
〝とても美味しい〟
この上なく喜ばしい褒め言葉。
「そうだな…。甘いわけではないが、味に甘味がある…。あ、旨味か。これが旨味なのかもしれん。なぁ、柚葉。…柚葉?何を笑っているんだ」
「あ、ごめんなさい。お褒めの言葉、嬉しいです」
一人で答えを出そうとしている姿が面白くて、思わず笑って見ていた。
こんな顔、するんだ。こんなこと言ってくれるんだ。
そう考えていたら、旦那様が可愛らしかった。
「美味しいよ。特に味噌汁が美味いな。また作ってくれ」
「はい、もちろんです」