満月の誘惑



旦那様の声が、私の頭の中で何度も同じ言葉を繰り返す。


〝とても美味しい〟


この上なく喜ばしい褒め言葉。




「そうだな…。甘いわけではないが、味に甘味がある…。あ、旨味か。これが旨味なのかもしれん。なぁ、柚葉。…柚葉?何を笑っているんだ」


「あ、ごめんなさい。お褒めの言葉、嬉しいです」





一人で答えを出そうとしている姿が面白くて、思わず笑って見ていた。


こんな顔、するんだ。こんなこと言ってくれるんだ。


そう考えていたら、旦那様が可愛らしかった。





「美味しいよ。特に味噌汁が美味いな。また作ってくれ」


「はい、もちろんです」



< 16 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop